災害事例(ケガを防ぐために)
日本フルハップ
会員広報誌「まいんど」
2024年9月号より
日本フルハップでは、仕事中・仕事外を問わず、24時間中のケガに対する補償を行っており、「転倒」による災害は、令和5年度では6,188件発生しております(災害の発生原因で最も多い)。
転倒は、いつでも、どこでも、誰にでも起こる可能性があります。
今回は、業務中の災害(事故)防止の参考としていただくため、部品の運搬中に発生した事故の事例をご紹介いたします。
【事例】
自動車部品の製造会社で、検品や梱包作業を長年にわたり従事しているAさん(54歳・男性)は、これまで段差の多い工場で作業を行ってきましたが、大きな転倒事故が発生したことはありませんでした。
この日も、Aさんは取引先より依頼を受けた自動車部品の検品・梱包作業を行っていましたが、同社より急な部品の発注変更があり、いつも以上に時間に追われながら作業を行っていました。なんとか無事に、検品と梱包の作業を終えることができましたが、梱包した部品をかかえ、この後の作業予定のことを考えながらトラックまで運んでいたときに、両手でかかえていた荷物で足元が見えづらく、工場の出入り口にある敷居の段差につまずいて、転倒してしまいました。
その際、荷物を落とすまいと無理な体勢となり、コンクリート床に頭部を強打してしまったAさんは、総合病院に救急搬送され、MRI検査を受けたところ、「頭部打撲」、「急性硬膜下血腫」の診断で入院し、開頭血腫除去術を受けることになりました。一時は「後遺障害が残る可能性がある」と医師から告げられるほどの状態でしたが、幸いにも大事には至らず、約2ヵ月の入院を経て退院することができました。現在、Aさんは以前の状態まで回復し仕事にも復帰していますが、この事故をきっかけに職場の環境が見直され、段差の修繕や障害物の整理が行われることになりました。
ケガを防ぐために
今回の事例では、段差の多い工場で、集中力が必要な作業中に別の作業について考えていたことに加え、かかえていた荷物で足元が見えづらい状況で作業を行ったため、重大な事故につながりました。
次のポイントに注意して転倒事故を防ぎましょう。
- 1.安心・安全を確保した作業計画
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急な作業変更があると、時間に追われ、作業をしながら別の作業工程を確認するなど、注意力が散漫になり、間違いや作業ミスが増加します。
- ①想定されるリスクを見積もり、作業計画を作成する。
- ②優先順位をつけ、余裕のある時間配分をする。
- ③作業を行う前に、職場で「あわてず、あせらず、あなどらない」などと声を掛け合う
- 2.職場の転倒防止のための細やかな安全対策
- 小さなリスクであっても、十分な対策ができていないと大きな事故につながる可能性があります。
- ①4S(整理・整頓・清掃・清潔)を徹底する。
- ②「段差注意!」などのステッカーを貼る
- ③職場の危険マップを作成する
転倒は身近な災害であり、誰にでも起こりうるため、油断は禁物です。
上記の対策のほか、転倒防止のため、段差解消スロープを設置するなど、安心・安全な職場を実現するための対策を積極的に行いましょう。
また、筋力やバランス機能を鍛えるトレーニングや体操※を継続して行い、転倒しにくい体づくりを心掛けましょう。
※参考:厚生労働省HP「職場のあんぜんサイト」