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新たな化学物質規制への対応

化学物質管理者の選任義務化

中川 潔(安全安心株式会社)

労働安全衛生コンサルタントとして、業界問わず安全で快適な職場づくりをサポート。
安全衛生診断、現場指導や安全教育などを行い、企業の安全衛生レベル向上に努める。

職務内容と選任ルールを理解しよう

労働安全衛生規則改正により、2024年4月1日から「化学物質管理者」の選任が義務化されます。「労働安全衛生法等で製造・取扱いの規定が定められていない物質」による労働災害の多発がその背景にあり、業種や規模(労働者数)にかかわらず、リスクアセスメント対象物※1を製造または取り扱うすべての事業場が対象となります。化学物質を取り扱う事業所は、化学物質管理者選任等の準備を進めておきましょう。

●化学物質管理者の職務

化学物質管理者は、事業場において化学物質を適切に管理し、安全に取り扱う責任を担うと位置づけられており、事故や環境への悪影響を最小限に抑える役割を果たします。
代表的な職務は、ラベル表示・安全データシート(SDS)等の確認、リスクアセスメントやばく露低減対策の実施、労働災害発生時の対応や労働者への周知・教育などです。具体的には以下のとおりで、製造事業場※2は7項目すべて、取扱事業場※3は❶を除いた6項目が該当します。

  1. ❶ラベル表示、SDS等作成に係る管理
  2. ❷リスクアセスメントの実施に関すること
  3. ❸リスクアセスメント結果に基づくばく露防止措置の内容及び実施に関すること
  4. ❹リスクアセスメント対象物を原因とする労働災害が発生した場合の対応に関すること
  5. ❺リスクアセスメントの結果等の記録の作成及び保存並びに労働者への周知に関すること
  6. ❻リスクアセスメントの結果に基づくばく露防止措置の確認、労働者のばく露状況、労働者の作業記録、ばく露防止措置に関する労働者の意見聴取に関する記録・保存並びに労働者への周知に関すること
  7. ❼労働者への周知、教育に関すること

●化学物質管理者の選任要件

選任の要件は以下のとおりで、「化学物質管理者講習」は全国の各地域で開催されており、インターネット等で調べることができます。

製造事業場 化学物質管理者講習の修了が必須
取扱事業場 上記に準じた講習の受講を推奨

法令上、取扱事業場には受講義務はありませんが、化学物質リスクアセスメント※4などの職務に関する知識が不足している場合は、受講をおすすめします。また多忙で受講が困難な場合は、取扱事業場を対象として、オンラインで受講できる講習もあります。「オンライン 化学物質管理者講習」などのキーワードで検索してみてください。

  1. ※1 労働安全衛生法施行令別表第9等で定められた物質。
  2. ※2 化学物質を生産するメーカー(例:塗料、薬品)。
  3. ※3 化学物質を使用する事業場(例:塗装業、修理業、電気機器製造業)。
  4. ※4 化学物質などの危険性や有害性を特定し、労働者への危険または健康障害を生じるおそれの程度を見積もり、リスクの低減対策を検討すること。

災害を起こさないために化学物質管理者を選任し、危険性・有害性を把握・評価のもと、化学物質を安全に取り扱いましょう。