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雇入れ時の安全衛生教育

危険性・有害性を教えよう(とくに化学物質には注意)

中川 潔(安全安心株式会社)

労働安全衛生コンサルタントとして、業界問わず安全で快適な職場づくりをサポート。
安全衛生診断、現場指導や安全教育などを行い、企業の安全衛生レベル向上に努める。

業種を問わず、すべての教育実施が義務化

労働者を雇い入れたときは、次の安全衛生教育を実施することが法令で定められています。

教育項目

  1. ①機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取り扱い方法に関すること。
  2. ②安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取り扱い方法に関すること。
  3. ③作業手順に関すること。
  4. ④作業開始時の点検に関すること。
  5. ⑤当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
  6. ⑥整理、整頓及び清潔の保持に関すること。
  7. ⑦事故時等における応急措置及び退避に関すること。
  8. ⑧その他業務に関する安全又は衛生のために必要な事項。

かつて小売店や飲食店などでは、①~④の項目について省略が認められていましたが、2024年4月の改正により、すべての業種で8項目すべての実施が義務づけられます。機械や原材料等の危険性や有害性などは、製造業や建設業などにおいて注意すべきことと考えられがちですが、近年、生産現場以外での危険物・有害物の事故が多発しているためです。
一例を紹介しますので、自社での作業に当てはめて、災害発生防止の教育を行いましょう。

例1同一作業所内での別作業時に有機溶剤中毒

工場の部品置き場で防毒マスクを着用し、スプレー塗装を行っていたところ、同じフロアで検品中の作業者が有機溶剤中毒になった。

 問題点】
スプレー塗装の場所から少し離れているから大丈夫だろうと判断し、検品作業者に防毒マスクの着用を指示しなかった。

同一作業所内での別作業時に有機溶剤中毒イメージ画像

例2剥離(はくり) 剤による中毒

剥離剤を使うため防毒マスクを装着し、長時間、古い接着剤の除去作業を行っていたところ、化学物質の蒸気を吸って中毒になった。原因は防毒マスクの吸収缶が破過(吸着の限界を超えた状態)したためであった。

 問題点】
防毒マスクの有効使用時間を知らなかった。

剥離剤による中毒イメージ画像

例3一酸化炭素中毒

ガソリンエンジン付き高圧洗浄機とエンジン付きブロワを使用してシャワー室を掃除していたところ、体調不良で救急搬送された。原因は不完全燃焼による一酸化炭素中毒であったため、作業開始直後は問題なかったが、作業が進んだ頃に発症した。

 問題点】
一酸化炭素は臭いも刺激もないため、作業者が気付かなかった。

一酸化炭素中毒イメージ画像

例4一斗缶が爆発

空になったシンナーの一斗缶をゴミ箱に改造するため、グラインダーで天面を切断しようと加工を始めたところ爆発。ごく微量のシンナーが残っており、引火性の蒸気がたまっていたことが原因だった。

 問題点】
空き缶だから危険はないという誤認。

一斗缶が爆発イメージ画像

雇入れ時に必要な教育のなかでも、「安全衛生教育」は法で義務化された重要な教育です。教育項目を確認し、適切な教育を行いましょう。