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熱中症対策

空調ウェアと水冷服の使い分けを

中川 潔(安全安心株式会社)

労働安全衛生コンサルタントとして、業界問わず安全で快適な職場づくりをサポート。
安全衛生診断、現場指導や安全教育などを行い、企業の安全衛生レベル向上に努める。

それぞれの特徴を理解して活用を

暑い夏に備えて、そろそろ熱中症対策が必要です。屋外や冷房の効かない屋内の作業では、空調ウェアが広く使用されていますが、新たに水冷服も注目されています。
熱中症を防止するには、作業の状況などを考慮して最適なものを選ぶ必要があります。それぞれの特徴を理解し活用しましょう。
空調ウェアは送風による冷却効果と汗の蒸発にともなう気化熱を利用しています。一方、水冷服は取り付けられたタンクに氷と水を投入し、内側に張り巡らされたチューブのなかを、氷で冷やされた冷水が電動で循環することで体を冷やします(下図参照)。

■水冷服の冷水循環イメージ

水冷福の冷水循環イメージ

どちらも熱中症の防止に効果的ですが、それぞれに短所もあります。空調ウェアは、外気温または室温が体温より高くなると、熱風を吸い込んで不快に感じたり、ファンの回転音がうるさく感じられる問題があります。また、服内に空気を吹き込むため、粉じんが入ってしまうこともあり、過去には、溶接作業の火花により、服のなかで火災が発生する事故も起きています。一方の水冷服は、環境によっては頻繁に氷を継ぎ足す必要があり、現場に冷凍庫などの準備が必要です。また、背中にタンクがある水冷服については、フルハーネス型安全帯を使用する場合の支障となります。それぞれの長所・短所を考慮して選択しましょう。
ただし、どちらを使用しても、睡眠不足などの健康状態や水分・塩分不足などによって熱中症を起こす可能性があります。日頃から教育や監督指導を徹底することが重要です。

空調ウェア 水冷服
特長 送風による冷却効果と気化熱による冷却効果がある
  1. 水が冷やされながら循環するため、作業服のなかの温度を下げることができる
  2. 空調ウェアより電気の使用量が少ない(バッテリーが長持ちする)
課題
  1. 粉じんの発生するところには不向き(粉じんを吸い込む)
  2. 火花を吸い込むと服のなかが燃えることもある
  1. 交換用の凍らせたペットボトル等が必要になる
  2. 背中に氷を入れるタイプではフルハーネス型安全帯との併用がむずかしい
動作音 音が大きい 静か
価格 廉価なものから高価なものまで種類が豊富 やや高価
種類 ベスト型、作業服型、つなぎ型など種類が豊富 種類は少ない
外観 ふくらみが大きい 氷を入れたところがふくらむ

本格的に暑くなる前に、事業主は、空調ウェア・水冷服など、熱中症対策グッズの準備を始めましょう。