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呼吸用保護具の規格改正

防毒マスクに電動ファン付き呼吸用保護具が追加

中川 潔(安全安心株式会社)

労働安全衛生コンサルタントとして、業界問わず安全で快適な職場づくりをサポート。
安全衛生診断、現場指導や安全教育などを行い、企業の安全衛生レベル向上に努める。

呼吸が楽になり、安全性も向上

令和5年10月から、「防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具」が、型式検定等の対象機械に追加されました。型式検定とは、労働安全衛生法で定められた機械等検定規則に則って検定し、合格証を交付する制度です。

防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具(以下、防毒用電動ファン付き呼吸用保護具)は、主に電動ファン、吸収缶、面体等から構成される、ろ過式呼吸用保護具です。環境空気中の有害なガス等を除去した空気が装着者に供給されるため、呼吸が容易になります。

また、電動ファン付きマスクは、電動ファンの送風により常に面体内は気圧が高い状態を維持しているので、仮に隙間が生じても外へ空気が吹き出すため外気の侵入を防ぎ、安全性を保てます(下図参照)。

とくに、防毒用電動ファン付き呼吸用保護具が適している作業は、粉じんと有機ガスの両方が存在する場所です。従来、防じんフィルターが付いた吸収缶の場合は、吸収缶と防じんフィルターの二層構造のため吸気抵抗が高く、呼吸が非常に困難でした。

防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具

ファンにより空気を送り込む防毒用電動ファン付き呼吸用保護具であれば、吸収缶に防じんフィルターを付けても楽に呼吸ができます。さらに、防護係数が高いため、有機ガス等の濃度が高い場合にも使用が可能となります。

なお、電動ファンは防爆構造にはなっていませんので、引火性のガスや溶剤を使用するような爆発危険箇所では使用できません。また、型式検定に合格していない防毒用電動ファン付き呼吸用保護具は、2026年(令和8年)9月30日までしか使用できません。それまでに型式検定に合格したものに買い換えてください。

※呼吸用保護具の性能を示す数値。数値が高いほど安全性が高く、有害物質の気中濃度が高い場所に適している。

使用時の注意事項

  1. ①使用前にバッテリーの充電状態を確認する。
  2. ②予備のバッテリーを準備する。
  3. ③面体と顔が密着していないと防護効果が低下するうえ、隙間から空気が漏れて必要以上に空気の供給が必要となり、バッテリーの消耗につながるため、隙間が生じないように装着する。
  4. ④使用する化学物質の種類や作業を考慮して、安全に使用できる時間を設定し、適切に吸収缶を交換する。
  5. ⑤フィルター(防じんマスクのろ過材)には交換時期を知らせる機能が付いたものもあるが、吸収缶(防毒マスクのろ過材)には同機能がないため注意する。

有機溶剤などを使用する場所では、呼吸が楽にできて安全性の高い防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具がおすすめです。