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移動式クレーンの安全対策

チームで取り組む安全作業

中川 潔(安全安心株式会社)

労働安全衛生コンサルタントとして、業界問わず安全で快適な職場づくりをサポート。
安全衛生診断、現場指導や安全教育などを行い、企業の安全衛生レベル向上に努める。

各作業者が安全対策を徹底する

移動式クレーンは、建設資材などの昇降運搬になくてはならない機械です。10トンを超える大きな荷を吊り上げることもあり、機体が倒れたり、積荷が落下すると甚大な災害につながります。安全装置(過負荷防止装置)等の設置が義務付けられて以降、災害は減少傾向にありますが、毎年一定数報告されています。

安全に作業するためには、各作業者の役割を明確にして、チームで作業することが重要です。長尺物の荷(寸法が長いもの)での作業者ごとの手順を紹介します。次の点を順守し、徹底した災害防止対策に取り組みましょう。

■移動式クレーン運転者

  1. ❶有資格者が運転を行う。
    • ●吊り上げ荷重5トン以上      
      ➡︎ 免許取得者
    • ●吊り上げ荷重1トン以上5トン未満
      ➡︎ 技能講習修了者
    • ●吊り上げ荷重0.5トン以上1トン未満  
      ➡︎ 特別教育修了者
  2. ❷作業前に巻過まきすぎ防止装置、ワイヤーロープ、フックの外れ止め等の安全点検を行う。
  3. ❸機体は十分な強度のある場所に設置する(軟弱な地盤では敷板などを使用)。
  4. ❹アウトリガー(機体が転倒しないための支持装置)は完全に張り出す。
  5. ❺定格荷重(フックなどの吊り具の質量を差し引いた吊り上げできる荷重)を超えた荷を吊らない。
  6. ❻安全装置はつねに有効にしておく(例えば、定格荷重を超えた荷を吊るとクレーンが停止する「過負荷防止装置」を、運転者が解除して作業を行ったことで事故が発生している)。
  7. ❼合図者の指示に従って操作する。

■玉掛け作業者(クレーンのフックに荷物を掛けたり、下げたり外したりする作業員)

  1. ❶有資格者が作業を行う。
    • ●吊り上げ荷重1トン以上      
      ➡︎ 技能講習修了者
    • ●吊り上げ荷重0.5トン以上1トン未満  
      ➡︎ 特別教育修了者
  2. ❷作業前に玉掛け用具の点検を行う。
  3. ❸荷の形状、重量等に合わせた確実な玉掛け方法を行う。
  4. ❹吊り荷の下に入らない。
  5. ❺長尺物の荷を吊る場合は、吊荷を直接つかんで墜落するなどの危険を回避するため、介錯かいしゃくロープ(吊り荷を安定させたり引き寄せたりするためのロープ)を使用する。

■玉掛け作業責任者

  1. ❶関係者に作業計画の内容を伝え、十分に打合せ、危険予知ミーティング(危険箇所を確認するための作業前ミーティング)を行う。
  2. ❷吊り荷の重さ、数量、玉掛け用具、玉掛け方法を確認する。

■合図者(運転者に合図を出し、吊り荷の上げ下げや所定場所への移動の指示を出す作業員)

  1. ❶移動式クレーンの運転者からよく見える場所で合図を行う。
  2. ❷玉掛け作業者が吊り荷から十分に離れていることの確認および声掛けをしてから、クレーン操作の実行指示を行う。
移動式クレーンイメージ画像

移動式クレーンの作業を安全に行うためには、各作業者が責任をもち、綿密なコミュニケーションや声掛け、合図により、相互の安全を確認して作業することが重要です。