中川 潔(安全安心株式会社)
労働安全衛生コンサルタントとして、業界問わず安全で快適な職場づくりをサポート。
安全衛生診断、現場指導や安全教育などを行い、企業の安全衛生レベル向上に努める。
騒音防止対策
労働安全衛生コンサルタントとして、業界問わず安全で快適な職場づくりをサポート。
安全衛生診断、現場指導や安全教育などを行い、企業の安全衛生レベル向上に努める。
大きな音が発生する環境で働き続けると、騒音性難聴になるリスクが高まります。日常会話に支障のない高音域から聴き取りにくくなるため、初期段階では気づきにくく、徐々に悪化します。やがて相手の声が聞こえなくなって重度の難聴となり、会話ができず、警報などの重要な音も聞こえなくなります。仕事をやめても聴力は元に戻りません。加齢による聴力低下も加わることで、30歳代から騒音性難聴により日常会話が困難になる場合もあります。
厚生労働省は2023年4月、約30年ぶりに「騒音障害防止のためのガイドライン」を改訂しました。事業者はこのガイドラインに従い、従業員の騒音障害防止に努めましょう。
厚生労働省
「騒音障害防止のためのガイドライン(パンフレット)」
管理者を選任しましょう。選任要件はありませんが、「騒音障害防止のためのガイドライン」の内容を理解していることが必要です。ガイドライン(パンフレット)のP7に掲載の、管理者に実施する労働衛生教育の科目も参考にしてください。
等価騒音のレベルを評価しましょう。測定方法は「騒音障害防止のためのガイドライン」に従って実施してください。
※測定時間内の騒音の大きさの平均値
代表的な聴覚保護具として次のような種類があります。発泡タイプは耳に馴染みやすいですが、使い捨てです。形成タイプはフィット感が劣りますが、洗って繰り返し使えます。イヤーマフは耳全体を覆うため耳の穴の不快感がありません。
雇入れ健康診断や聴力検査を実施し、結果に応じて、配置転換などの措置を実施しましょう。
管理者および労働者に対して騒音障害防止に関する安全衛生教育を実施しましょう。労働安全衛生関連団体主催などの管理者向け研修がありますので、受講した人が社内で教育を行うとよいでしょう。
低騒音型機械の採用や作業工程の見直しといった作業環境全体の改善も重要です。最適な騒音対策を検討するため、労働衛生コンサルタントなどの専門家に相談することも有効です。
騒音は一般的に「不快な音、邪魔な音」ですが、耳にとっての負担は、音楽の音も機械から発する音も同じです。そのため、騒音性難聴は、職場の騒音だけではなく、プライベートの時間帯で受ける騒音も原因となります。従業員の騒音性難聴を防ぐため、職場環境の改善を進めると同時に、私生活ではイヤホンの音量の上げ過ぎに注意するなど、耳に負担をかけないよう指導しましょう。
聴力の衰えは、QOL(生活の質)の低下につながります。従業員に騒音による影響を教育するとともに、職場環境の改善を進めましょう。