見えない危険から身を守る
酸素欠乏(以下 酸欠)や硫化水素中毒は、命にかかわる重大な災害です。被災者のおよそ半数が命を落としており、一命を取り留めた場合でも、脳などに後遺症が残るケースが少なくありません。
酸欠や硫化水素中毒の危険がある場所で作業するには、作業者自身が特別教育を受講し、基本的な知識を理解している必要があります。
【1】酸欠の危険がある場所
以下は、労働安全衛生法施行令で酸素欠乏危険場所と定められています。
- ①長期間使用されていない井戸等の内部
- ②雨水や湧水などが滞留している、または滞留したことのある槽、暗渠(地下に埋設された水路)、ピット、マンホール等の内部
- ③石炭、硫化鉱、鋼材、くず鉄、原木など空気中の酸素を吸収する物質を入れてあるタンク等の内部
- ④醤油、酒類、もろみなど酵母等により発酵するものを入れたことのある醸造槽・タンク等の内部
- ⑤長期間密閉されていた鋼製タンク、船倉等の内部
- ⑥油性塗料等で内部を塗装し、乾燥していない倉庫・タンク等の内部
- ⑦ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの気体を入れてあるタンクや反応槽
【2】酸欠・硫化水素中毒の危険がある場所
- ①海水が滞留している、または滞留したことのある熱交換器、暗渠、ピット、マンホール等の内部
- ②し尿、汚水など、腐敗しやすいものを入れてある、または入れたことのある水槽、暗渠、ピット、マンホール等の内部
酸欠・硫化水素中毒に共通する防止策
STEP1準備
- ■酸欠・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了している者から酸欠作業主任者を選任し、その者に作業手順を作成させましょう。そして、労働者が手順に従って作業するよう指揮監督の任務を与えましょう。
- ■酸欠・硫化水素中毒の危険場所で作業する労働者に対し、酸欠危険作業特別教育を受講させましょう。
STEP2測定
作業主任者は作業を行う場所の酸素濃度および硫化水素濃度を測定しなければなりません。
酸素濃度が18%未満の場合
- ●換気を行い、基準(18%)以上になってから作業を開始。その後も換気は継続する。
- ●酸素濃度に対応した呼吸用保護具を使用する。
硫化水素濃度が10ppmを超える場合
硫化水素濃度に対応した呼吸用保護具を使用する(換気は悪臭を広げるため、二次被害防止の観点から不可)。
STEP3対策
- ■作業を行う者以外の立入を禁止しましょう。
- ■作業者等の状態を監視する監視者を配置しましょう。また、監視者は事故が発生した際、自ら救助に向かうのではなく、作業主任者等へ通報することが求められます(監視者が一人で救助に向かい、死亡する事故が非常に多い)。
- ■万が一、酸欠・硫化水素中毒が発生した場合には、二次災害を防止するため、救助に当たる者は有効な呼吸用保護具を使用しましょう。